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THE SHIDO

 塾をサービス業と捉えることには異存はないが、俺はその範疇からとっくに抜け出ている。もちろん俺は「塾業界」の人間でもないし、塾屋でも塾人でもない。何者かっていうのはそれ以外のネーミングならどれだっていい。ただ、「教育」「指導」「伝授」はやっている自負がある。

俺の塾はサービス業を「辞退」しているので、塾には幸か不幸かお客様はいない。確かに子どもを預かり、保護者からはカネを頂いているが、俺の中には「お客様」という意識は1%もない。もちろん、保護者には最大の礼を払い、子どもには誠心誠意を尽くして指導にあたる。ただし、こちらが阿ることは一切ないし、下手(したて)に出ることもない。預けてくれた以上、こっちも必ず成績を上げてやるつもりでやるので、基本的には黙って俺の言うことをききなさい、俺に任せなさいというスタンスだ。

公立中学生に関して言えば、学校の平均点にも行かない子どもなど「半人前」の中学生だと思っている。こんな半人前の子どもがやれゲームを買ってくれとか、スマホを買ってくれとか言うのを聞き入れる親はどうかしている。だから俺は入塾時に必ずこの確認はする。部活にも釘をさす。成績が半人前のくせに部活を堂々とやるのかと。その他、入塾前には「休まない・休ませない」を必ず約束させるのと「容赦なく怒る(叱る)こと」「場合によっては日数無制限、期日無期限の補習をやること」も了承してもらう。もう8年もそういうことをやっているせいか、さすがに評判は定着しているようで絶対に入塾希望者殺到という状況にはならない(笑)。でも、それは俺が望むことであるし、もしも俺のこのスタンスが本当に地域に受け入れられずに経営ができないほど生徒が入って来なくなれば、俺は悪あがきせずに「ああそうですか、わかりました」とさっさと看板を下ろす。まあ、そのぐらいの覚悟で最初からやっている。

ところで、最近また中2の「半人前」が入ってきた(俺の塾のすぐそばの大手塾に半年通塾後に転塾)。うちはトップ校を狙う塾だって最初から言っているのに、なかなか意欲の高い成績優秀者が入って来ないところがまた悩ましい。しかし、小さな個人塾の場合、それは宿命みたいなもので、河原の小石からいかにダイヤモンドの原石を発見して磨き上げ、本人や親が想像もしなかったような高校に合格させたり、いかに学校の上位やトップに食い込ませたりするかが醍醐味でもある。

俺の塾で特に「半人前」への指導は厳しい。最近たまたま思いついて気に入っているからまた使うが、半人前への指導は「粘着指導」だ。とにかくネチネチ、ガミガミ、またネチネチと指導が続く。最近入った中2生も、入塾後は毎日来ている。通常授業が週3日で、残りの3日〜4日も毎日呼んでいる。当たり前だろ?勉強してなかったんだから、まずは「毎日させる」のさ。しかも、間違った自学をさせないために俺の目の前で。遠くから来ているので保護者の送迎は大変だが、それは辛抱してやってもらわないといけない。というか、こうなったのは親の責任でもあるのだから、文句は言わせない。仮にクレームが入っても俺は一歩も引かないから、観念してもらうか退塾になる。

武道と一緒で勉強でも結局「心技体」が必要でね。

毎日塾に来て勉強させる。次は「勉強のやり方」を矯正して行く。ノートは教科別に何冊必要でどのように使うか。筆記用具やマーカーペン、ボールペンはどのぐらい必要か。修正テープを用意させる。ノートの取り方も、板書で俺が色を変えたらそれは大事なところなのだから同じように色を変えること。アンダーラインや囲みをつける時にフリーハンドで汚くしないで定規をあててピシッと引く。問題を解くときは日付を書き、問題集の名前とページ番号、問題番号を書く。間違えた問題には問題集に印をつける。英語の教科書本文に訳は書かない。発音は発音記号を教え、カタカナで読み方を覚えさせない。


話の聞き方。俺が説明をはじめたら、すべての行動を止めて俺の顔を見て説明を聞く。もしも顔が下がっていたら、マーカーペンが手裏剣のように飛んでくる。ちなみに、俺の塾では話を聞きながらメモを取る動作は、顔を下げた状態が続かなければOKにしている。挨拶や返事にもうるさい。俺の顔を見ることなく挨拶や返事をすると注意される。返事も頷くだけなど論外で、話をろくすっぽ聞かずに「はい・・はい・・はい・・」と変なタイミングで返事をすると注意される。

間違えた問題の処理。間違えた答えを消さない。間違えた答えの上から正しい答えを書かない。適切な〇の大きさ、位置。質問をしたり、俺から何らかのヒントをもらったりして正解したものは〇にしないこと。やり直しは、ただ答えや解説を写すのはダメで、必ず「ポイント(考え方)」を記しておくこと。それをせずに次のページをやろうとしたら、俺のチェックが入り怒られる。あとは、質問もせずに勝手に空欄にして問題を飛ばすのも怒られる。ポイント(考え方)を記すのも、その内容を俺にチェックされる。半人前の生徒はこれもいい加減にやる傾向があり、強引にこじつけでポイントを「発明」して書いてしまう。当然、怒られてやり直し。

質問も、答えそのものを聞いて来る、あるいは問題をやっている途中で「ここまでは合ってますか?」というものは却下。そして、明らかに質問すべきところを質問しなかった場合、俺が近づいて反対に質問する。それに適切に答えられない場合は怒られる。半人前の初期の段階は「質問せずに怒られる」ことが多いので、俺の塾では塾長の俺が相当恐れられていても質問はよく出る。もちろん、最初はピントがずれたようなものも多いが、何事も経験で、だんだん質問の内容も的を射てきて深くなり、質問をすること自体の抵抗が薄くなる。

細かなところでは姿勢。肘をついたり、髪をさわったり、斜めに座っていたりする姿勢はすぐに直される。数回言われても直さない場合は罵倒されたり、癖のついた手や足を払われる。文字もそうだ。汚い字は修正を命じられ、あまりに続くと「すべて最初からやり直し」させる。

100%とは言わないが、文字を丁寧に書くことと学力は大いに関係がある。文字を丁寧に書くことで気持ちが落ち着き、テキストやノートへの集中力が高まる。そして丁寧な文字を自身で目にすることで、汚い文字の頃よりも正確な情報を得るようになる。

あと「こんなことまで?」と言われそうだが、テキストやノートの位置。自信のない半人前はノートを隠すようにして演習するが、俺から手荒く手をどけられて注意される。あと、たとえば、右利きの生徒が、問題集の左側のページを解くとき。もしもこの時、ノートは右のページを使わなければいけない状況でテキストを左手側に置いたら目の位置から遠くなる。勉強「半人前」の中学生はこの極めてやりにくいポジションをまったく変えようとせず演習をやろうとする。酷い場合はテキストをクルリと反らせるように丸めて必死で手で押さえながらやるのもいる(笑)。だから、テキストやノートの右側、左側によって、テキストを置くポジション、ノートを置くポジションを指示し、最も目に近く見やすい位置でやるように指導する。

覚えた数学の公式や英文法をすぐ忘れる生徒には単語カードを準備させ、裏と表をQ&Aにして毎回俺がそこからネチッこく出題する。


あのなあ、わかるか?これが「指導」っていうんだよ。

成績が「半人前」の中学生はここまでやって、はじめて「1人前」になって行くんだよ。おだてたり寄り添ったり、機嫌取ったり、自主性に任せたり、楽しませたり。そんな生温いことじゃあ半人前のまま飼い殺しにされる確率が高いんだよね。俺からすれば多くの塾がチラシなんかで謳っている「必ず成績を上げます」「熱血指導」なんてのは、失礼だけどママゴトみたいなレベルなんだな。

俺の塾は集団塾だけど、この辺のどんな個別指導塾よりも指導は「個別で」「細かい」はず。というか、ここまでの指導ができるはずがない。何てったって、預かった生徒を「絶対にできるようにするぞ」という覚悟と気合いと執念が別次元だと思うからね。医学的レベルで学習機能に問題がない限り、このぐらいやれば必ずできるようになるよ。

問題は、この粘着指導に本人や保護者が耐えられるか。辛抱できるか。これが一番大きいんだけどね。最初は体力的に精神的に負担が大きいことは確かだし、半人前が喜ぶような楽しいことなんて何一つないし。でも、俺は絶対の自信があるのよ。だからもし、この指導が嫌だとか怖いとか面倒だとか少しでも不満を見せたら、俺は保護者であっても怒鳴り上げて喧嘩するし、分かってくれなければスッパリお断りするよ。半人前とその親がここまでの指導されて、きついだの厳しいだの合わないだのと言うなんて、勉強なめんなよって感じだからね。しかもこっちはもし市場の価値で金に換算するなら1ケ月10万円は下らないはずのこの粘着指導を、1円の金も取らずにやってんだから(もちろん通常の授業料はもらっている)。

まあ、俺の「指導」というのは、相手の気持をできるだけ考えないようにしないとダメなんだよ。特に、成績が半人前の場合は、子どもの個性とか性格とかそんなものを考慮しちゃいけない。とにかく正しい方法と手順で「力をつけること」が最優先。子どもがきついとか、つらいとか、痛いとか、泣くとか、そういうことがあっても「そうか大丈夫だ、頑張れ乗り越えろ」と言うだけだし、親が「子どもが泣いて帰ってきます」と言って来ても「いつか笑顔になるために今泣いておきましょう」と言うだけだ。

うーん、でもやっぱり、これじゃあ永久に塾として人気が出なさそうだな(笑)。



ロカビリー * 教務のブルース * 00:36 * comments(5) * -

コメント

素晴らしいです。ただただ素晴らしいです。
あらゆる指導法・勉強法の頂に存在するであろう肝が全て過不足なく書かれています。

感動しました。そして、こうした指導やこうした勉強ができる塾・生徒は全国にそう多くは存在しないでしょう。「すごいな〜」「なるほど」と思っても、それを実行に移せる人はごく僅かだと思います。
Comment by 赤虎 @ 2013/10/06 6:02 AM
更新お疲れ様です。

身にしみました。
頑張ります。
Comment by きんぐ @ 2013/10/06 9:55 AM
赤虎先生

本音を言えば、こちらにも相当な負荷がかかるので、やらなくていいならやりたくないんですけどね(笑)。そしてまた、半人前をやっと1人前(学校の定期試験で平均を超え8割ほど得点できるようになり、学校の授業が分かるようになって、塾の授業にもついて来れるようになったレベル)にしたと思ったら、また半人前からの問い合わせが来るという(笑)。
しかし、赤虎先生も生徒全員のノートを毎回集めてチェックをされていますよね?いや、私にはこれはできないです。というか間違いなく脳出血を起こします(笑)。
Comment by ロカビリー @ 2013/10/06 1:25 PM
きんぐさん

頑張れー!
Comment by ロカビリー @ 2013/10/06 1:26 PM
いつも楽しみに拝見しております。ロカビリー先生の応援、並びに自分への叱咤激励としてコメントさせていただきます。

指導への熱意、十分に心に受け止めました。僕が受け止めても仕方がないかもしれませんが(笑)

「半人前の生徒」を育てた後、また「半人前の生徒」が入塾する、というところが思わず、自分のことと重ねて、苦笑いしてしまいました。

私も、塾人の端くれとして、ロカビリー先生のブログを拝見し、励まされ、日々「格闘」しております。

「半人前の生徒」を前にしたとき、「今回は心穏やかに、何とか1人前路線に引き込んでやるぞ!」と毎回思うのですが、気付けば・・・激昂しております(苦笑)

「あいさつもろくにできん奴が、勉強なんかできるかー!」という具合です・・・

私も、保護者には「当たり前のことを徹底します」と入塾時にはお伝えするのですが、いざ「その状況」に対峙すると、「大丈夫ですか?この子耐えられますか?」というように、ちょっと腰を引かれることも多く・・・

「お家ではしっかりサポートしてください!お願いします!」とお伝えして、ガンガン頑張るという感じですね(笑)

結局のところ、塾というのは成績を上げるために存在するわけですし、こちらもやる以上は「全力」でぶつかっていかないといけません。

また、成績がグンと上がっても、退塾していく生徒がいることも切ないところです。

ウチの塾も「永久に塾として人気が出なさそう」です(笑)

頑張りましょう!!
Comment by スナフキン @ 2013/10/08 10:38 PM
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