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訪問の礼儀(序)

 2014年が開けた。2006年に塾を開いて、9年目になる。

開業とほぼ同時に自分の塾の記録としてブログを始めたのだが、そのおかげで出会えるはずもない方たちとの素晴らしい出会いがあった。「ネット交流」という言葉があり、それはややもすれば実社会における交流のアンチテーゼのように批判されることもある。確かにそのような側面があることは否定できないし、そこには人間の最も素直な部分と最も醜い部分、それから仮面と虚飾に満ちたものが溢れていることも実感としてあった。しかしながら、実際に文章から始まる出会いを経験した俺にとって「ネットがきっかけ」というのは決して悪いことではななく、「世界が広がった」というよりも「世界を深めてくれた」感覚があり、それは同時に自分と改めて向き合う貴重な機会だった。

俺はこのブログがきっかけで、また、たまたま読み始めた他の方のブログがきっかけで知り合い、楽しい時間を過ごした時はできるだけここに書いている。俺が勝手にしていることであるが、そうすることが相手の方への礼儀だと思っている。

しかし、これまでブログを通じて出会った方々のことをすべてここに書いたわけではない。書かない理由は2つ。1つは、相談事である場合。こんな「ロカビリー」という匿名の人間に相談を持ちかけるというのは大変勇気が要ることで、緊急性が高いものもあった。いくら匿名だと言ってもそのご本人がご覧になられている以上、やはりその心情を慮ると内容を軽々と書くことはできない。相談事ではなくても、話の内容が深刻なものである場合、やはりここに書くわけにはいかない。また、相手の方から何となく「書いてもらいたくない」という雰囲気が感じられた時は、勝手ではあるが、相手の方に確認も取らずに書くのを控えている。

ブログに書かないもう1つの理由。それは、俺が「書く気になれない」とき。自分の中で、その方と過ごした時間の面白さをできるだけ臨場感を込めて書きたいと思うのだが、俺自身の熱が完全に下がってしまうほど気持ちの盛り上がりはなく、それどころか言動の端々に不快感さえあった時。

今回は、そのような「書かなかったケース」のいくつかを綴りたい。本来ならば、そのようなことは大人なのだから胸三寸に納めるべきであることは承知している。まあ、言うなれば「陰口」に変わりないわけだから。しかし、それでも書こうと思ったのは、しばらく経って考えてみても、やはり「それはおかしいだろう?」という俺の気持ちに変化がなかったことと、恐らく、相手の方は、そのおかしさに気付いておられないということ。そのような方たちとは、だいたいそれ以降は疎遠になることがほとんどなので、今でも俺のブログを読んでおられるのかどうかさえわからない。ただ、もしも読んでおられれば、他の複数の方が「え?それ自分のことかも」とネットの文章にありがちな誤解を生じさせる書き方をしない、つまり、もちろん名前は出さないが「はい、あなたのことです」とご本人にだけズバリわかる書き方をするつもりである。

そしてもう1つ。

ネットで、あるいはネットでなくても塾の先生が知り合いとなり、勉強のために訪問する。やろうと思えば簡単にできる。しかし、これをご覧の方で、これまで訪問された経験がある方も、これからどこかの塾へ訪問してみたい、またあの塾長と会ってみたいと思っている方たちも十分に気をつけていただきたいことがある。

それは訪問する側は、旅費交通費やその他自塾の時間調整、場合によっては宿泊費や手土産等、大きな出費や時間をかけて訪問されているわけであるが、負担や犠牲が大きいのは圧倒的に「受け入れる塾側」だということである。たしかに、訪問を受ける側は「お客様」として歓迎してくださるかもしれないが、よほど懇意でない限り、塾にとって何よりも大切な「通常授業を邪魔しに行く」ことを忘れてはならない。やや不謹慎な言い方を許してもらえば、「受け入れる側には1円の得にもならない機会」なのである(「見学料」を取っている吝嗇塾は除く)。したがって、お客様として迎えてもらうことにそのまま乗っかってはならず、形式的なお礼ではなく、きちんと相手塾の感想を言葉にして述べるのが最低限の礼儀である。

俺は基本、よほど最初のアプローチが無礼でない限り「お会いしたい」「塾にお邪魔してもいいですか」という依頼を断らない。これからもできるだけそのようなご依頼はお受けしたいと考えている。そうすることで、1人でやっている個人塾の風通しになると思っているからだ。俺にとって風通しとは、自分以外のプロに塾や授業を具に見ていただき、できるだけ詳細で具体的な(感覚的でももちろんいいけれども)ご感想をいただいたり、ご質問を受けたり、お話をしたりすることでそれらが「風」になり、再発見や刺激になることである。それだけでなく、いらっしゃる「人」とどんな話ができるのか大変楽しみでもある。

これからどこかの塾に訪問したいと考えている方は、このシリーズを一読していただき、「受け入れる側」の心情を少しでも理解してもらいたい。そしていざどこかへ訪問するとき、地元の手土産を携えるよりも、訪問先で1つでも多くのことを観察して学び、それをしっかり先方の塾長に伝えることの方を何倍も考えてもらいたいものである。



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