<< 若い翼は(2) | main | 若い翼は(4)終 >>

若い翼は(3)

みかみ先生の授業開始時間が近づいてくる。この時間がいちばん緊張しておられた。特に用もなく立ち上がり、ウロウロされている(笑)。しかし、それも無理はない。ここに単身乗り込んできただけですごいことなのに、授業までやるのだから。俺は昨年東京へ行き、赤虎先生の塾では自己紹介と少し話をさせていただき、gen先生の塾では英語の授業をさせていただいた。その話をした時、みかみ先生が俺に「やはり緊張されましたか?」と尋ねられたが、俺は正直に「それはもう・・・まったく緊張はしませんでした」と答えてしまった(笑)。あそこは「もちろん、ドキドキでした」と言えば良かったかなと今になって思う。

さて、みかみ先生の授業。簡単に紹介をして前に立ってもらった。最初の数分だけ空気が硬かった。しかし、平方根に入って生徒を指名し始めてから徐々にペースをつかんで行かれた。

開始10分ぐらいで感じたのは「うまい」。俺がそう感じたポイントは6つあった。

まず1つめ。流れがある。

構成を考えていただけあって、授業が「流れ」ている。テキストの順番や書き方に頼り切った授業をすると、授業に流れができにくくなる。当たり前だがテキストはテキストの編集者の意図で編集されている。それをそのまんま、しかも導入でやってしまうと、味も素っ気もない。また、流れがないので、生徒集中力が高まる速度も鈍くなる。みかみ先生の授業は確かに目的へ向かう流れを感じた。

2つめ。空気のつくり方。

先生が緊張すると、それは生徒にも伝わる。みかみ先生に関して、まずそこは無難にスタートできた。次に声だが、大手塾などで研修を受けた、バカでかく「張った声」ではなく、話しかけるような声である。これは意外だった。塾講師ははじめどうしても緊張で声が出ないので、声を張るように研修されることが多い。それが当たり前になる。しかし、経験を積み、ベテランになるとだんだん声は「自然な地声」、場合によっては「囁くような声」でも生徒をグッと引きつける。みかみ先生はキャリア4年にして、「自然な地声」に近いトーンで授業をされていた。そして、歯を見せながらの笑顔を絶やさず、時折、関西弁のイントネーションが出る。この自然体の話し方で生徒も安心できたのではないかと思う。当てられた生徒が正解を言うと「そう!」と合の手を入れられ、教室全体にリズムが出てきた。

3つめ。区切り方。

説明をする。板書を写させる。問題演習の指示を出す。また説明に戻る。この区切り方は、ある程度経験を積んだ講師でも曖昧にしてしまい、生徒もだらけてしまいやすい。みかみ先生の場合、区切り方が明確なために、生徒も指示に従って動きやすそうだった。生徒は俺が授業をやっている時と何ら変わらない動きをしていたと思う。

4つめ。例の出し方。説明の工夫。

平方根を理解させるために「根」のイラストを描いて説明されたり、割れ物を段ボールに入れる時に新聞紙を使うことなどを例にとられたりして、生徒にイメージを与えていた。俺も非常に勉強になった。

5つめ。修正能力の高さ。

生徒に発問したり指名して当てたりしても、スムーズに答えが返ってこないことがある。そういう時、ヒントを出して正解に導く、あるいは、いくつか似たような問題を板書で挟んで再び指名し、生徒から正解を導きながら授業のリズムを上げていく。ただ、それでもこちらの想定通りにはいかないこともある。そんなとき、順調だった流れがガチャガチャと悪くなることがある。みかみ先生の授業でも途中、生徒がやや混乱した時間帯があったが、そこで大きく崩れることなく、辛抱強く生徒に訊き返されたり、別角度からのヒントを出されたりしながら「授業の流れ」に戻されていた。これは、なかなか高い技術が必要である。

最後に6つめ。時間の感じさせ方。

みかみ先生の説明は、聞いているとゆったりとした口調で、説明時間的にはやや長い(俺と比較した場合)。しかし、適度に間を置いたり、生徒に要所で当てたりしているので、説明の長さを感じさせない。必要な情報をしっかり盛り込みながら、ただ説明しっぱなしではなく、丁寧に生徒の頭の中に収納させようという意図を感じる。だからこの日、平方根の最初の授業としては、俺が例年やるよりもだいぶ先まで終えられた。「長く感じさせない」「多く感じさせない」授業の運び方は、相当な技術が要る。

その他。授業後の第一声と基本技術。

みかみ先生は授業後「悔しいです」と言われた。「どこか悪いところを指摘してください」とも言われた。俺からすれば、減点の余地のない授業だったと思うのだが、それだけ自分に厳しいということだ。「たとえ他人から見てよかったとしても、自分が納得できたかどうか」を重視する。俺も自分の授業に満足したことがほとんどないので、そういう意味でもプロ意識が高い。

あとは立ち方、板書の仕方等、所謂「基本姿勢」もきちんとできていた。ちなみに俺はこの辺、自分の塾生に関しては極めていい加減で、板書では平気で背中を向けるし、説明も生徒の顔を見ることなくホワイトボードを見ながらすることもある。板書も、よほど書き取らせる重要ポイントでない限り、読むのがやっとなぐらいの汚い字だ。良くないことなのかもしれないが、こういうのは、だんだんこだわりがなくなってくる(笑)。

そういうわけで「わるいところ」は本当になかった。それぐらい安定感があり、安心感の持てる授業だった。このレベルの授業ができれば、どこでやっても強力な即戦力だろう。仮に自分で塾を開かれたとしても、生徒の成績を上げ、生徒を引き寄せる塾長になる素養は十分にあると思う。

あえて1つ言うならば。授業の後にみかみ先生自身の口から「自身の授業の感想」をもっと聞きたかった。自分の授業をどこまで客観的に分析できたか。見知らぬ生徒に教えてみて、何が難しかったか。たった7人しかいない中3の生徒にどこまで入って行けたか。理解力、性格、スピードなど、およそ1時間40分の時間の中でどこまで生徒たちを把握できたか。

ただこれに関しては、授業後の宴の会場が、ゆっくり話ができるような雰囲気ではなかったので(笑)みかみ先生は悪くない。まあ、みかみ先生のことだから、きっとご自身のブログでその辺は何らか触れられると思う。







 
ロカビリー * シリーズもの * 02:40 * comments(0) * -

コメント

コメントする









このページの先頭へ